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真由美の一日(1) 

カテゴリ:偉大なる助平

 連載というほどでもないのですが、以前「書き出し」だけ載せた真由美の一日の続きです。

 間をあけつつ書いていこうかなと。

 気長によろしくお願いします。



真由美の一日(序) 

カテゴリ:偉大なる助平

真由美の一日


 目覚まし時計が鳴るぴったり一秒前。
 真由美は時計の裏側にあるアラームスイッチをオフにした。
 時針と分針がほとんど180度に開いている。つまり午前六時。
 淡い黄色のパジャマを脱ぎ、白い息を吐きながら、14歳、中学二年生の裸身を寒気にさらす。
「――っち」
 小さなくしゃみをひとつ。
 手早く身につけたのはトレーニング用のシャツとスウェットパンツ。それにウィンドブレーカーを羽織る。
 意外に女の子らしい小物が目立つ自室を出て階下に移動し、洗面所で冷たい水による洗顔、ハンドタオルで顔をぬぐいながら玄関へ向かう。
 まだ家の中は寝静まっている。
 外はまだ昏い。2月もまだ半ばに至らない極寒の頃だ。
 早朝のランニングは小学生時代からの日課だ。
 かつての真由美は風邪をひきやすい病弱な子供だった。それを心配した両親が体力を養うため近くの柔道場に通わせたのが真由美と格闘技の出会いだった。その後、空手も含めていくつかの武道を習い始め、「天才格闘少女」と呼ばれるようになっていく。
 だが、その外見は、ショートカットで少し気の強そうな眉と瞳が男の子っぽいけれど、まず十人が十人とも「美少女」と評するであろう容貌なのだ。格闘技で鍛えているだけあって、そのスタイルもすらりとして、ちょっとモデルじみている。女子柔道選手のイメージを根底から変えかねない、そういう意味でも柔道界の偉い人たちがむらがっていて、すでに「柔道強豪校」への勧誘合戦が始まっている。
 だが、真由美自身はそういったことにはあまり興味がない。柔道を続けているのも、オリンピックに出たいとか有名になりたいとか、そういう理由ではなく、単に子供のころから続けていて好きだからだ。(特に好きなのは、プロレスごっこ。好男相手に取っ組み合うのが大好きだった、というのは、内緒だ)
 練習を続けているのは、曲がったことがきらいなためだ。一度始めたことは、やり通さないと気がすまない。
 いつものコースを一周すると、ほぼ5キロ。真由美はそれを流して20分ほどで走りきる。本気で走れば18分台が出せる。陸上部も垂涎の走力の持ち主だ。
 ランニングを終え、帰宅してすぐにシャワーを浴びる。そのころには両親も起きていて、朝食の支度が始まる。
 父親はさえないサラリーマンで、いつもにこにこ笑っているような人だ。まじめなこと以外、特にとりえがない。母親は快活な女性で現在も五種類以上の習い事をしつつ、パートでも働いている。たぶん自分は母親似だろうな、と真由美は思っている。
 そんな両親と他愛のない会話をしつつ朝食を採り、家を出るのは7時。学校へは徒歩で15分ほど。7時30分からの朝練には十分間に合う。
 通学路の途中に色事家がある。何の変哲もない二階建ての家屋。以前は頻繁に遊びに行っていて、泊まったことも数え切れないくらいだ。その二階の窓に目をやる。その部屋には幼なじみで同級生の好男がいるはずだ。この時間なら確実に寝ているだろう。いつも遅刻ぎりぎりで、走って教室に飛び込んでくるのだ。
 その色事家には母親がいない。父親の極太と妹の沙世と好男の三人家族。
 ――よしおくん、おはよ
 心の中でそう告げて、真由美は早足で駆け出す。

                              つづく