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美耶子のお仕事 「どっきり大作戦!」(05) 

カテゴリ:うたかた 美耶子のお仕事

   ■6
「どっきりそのさん~! 小学生が裸でフィールドアスレチックぅ~!」
 と言いつつ移動したのは、遊園地に隣接したフィールドアスレチックだった。無料ということもあり、近辺の小学生にとっては格好の遊び場になっている。
「で、フィールドアスレチックはいいとして、なんでランドセルなんです?」
 美耶子は全裸に赤いランドセルを背負いつつ言った。もう桃山園やスタッフの前で裸でいることには慣れてしまったようだ。女の子としてはどうかと思うが、そうでもしないと精神的にやっていけないというのはわからないでもない。
「なんていうかね、ここまで絵的におもしろさがないのよね、あんたリアクション地味だし。お化け屋敷はちょっとおもしろかったけど、絵がないから使えないし」
 桃山園がつまらなさそうに言う。美耶子は顔を伏せる。お化け屋敷での失敗がトラウマになっているのかもしれない。
「なので、インパクトのあるアイテムを追加するしかないじゃない? 裸ランドセルならわかりやすいし」
「でも、これだと動きにくいよ……」
 小柄な美耶子は、小学三、四年生といっても通る稚なさだ。ランドセルが大きく見える。
 ランドセルにはご丁寧にリコーダーまで刺さっている。リコーダー自体は小道具として用意されたものだが、実際に美耶子に数曲吹かせて唾液をつけさせているという凝りっぷり。映像的には意味がないが、その部分については、「コイツ解ってる」と言わざるをえない。桃山園を褒める日が来るとは思わなかったぜ、くそ。
「まあ、ここでの絵はバックショットが多いからね、ランドセルががしゃがしゃ動くことでらしさが出るのよ」
「うう……」
 それなりの演出論に裏付けられた桃山園の指示を論破できない美耶子。
「じゃ、まずはネット登りよ」
「は……い」


 ネット登りというのは名の通り、壁のように張られたネットをのぼっていくアトラクションだ。高度差が5メートルもあるから、見た目よりもたいへんだ。むろん落ちた時にケガをしないよう、下にも安全ネットが張られている。
 地元の子供たちが壁ネットを上ったり、下の安全ネットをトランポリンのようにして遊んでいるなかに、裸ランドセルの美耶子が登場すると、周囲がざわっとした。
 だが、こういうリアクションには今日一日だけでもさんざん晒された美耶子である。何食わぬ顔で、ごく自然に――見た目は不自然きわまりないが――ネットを登り始めた。
 だが、この絵は――
 下の方から撮ると、赤いランドセルがしなやかな腕を生やし自らの意志を持って壁をのぼっていくように見える。そして、白くて小さな尻。細くて長い脚。
 そこに宇多方美耶子という少女の存在はなく、ランドセルと、腕と、尻と、脚の見事な連携だけがある。その美しいコンビネーションに絶句する。
『ふん、まあまあじゃない?』
 その日、初めて桃山園が満足げな声を出すのを聞いた。機材を積んだ車両の中のモニターで確認しているのだろう。おれはこの男を見くびっていたのかもしれない。
「わー、あいつ、まんこ丸見え!」
「ほんとだ、すっげー!」
 美耶子と変わらない年齢の子供たちがネットを見上げながらはやしたてる。
『くっ……』
 悔しそうな美耶子の声をマイクが拾う。裸を見られることに耐性ができていたはずの美耶子だが、同世代の男子に見られるのはまた違う恥ずかしさがあるのだろう。
 と、他のアトラクションで遊んでいた小学生のグループがネット登りのところにやってきて、美耶子に気づいたのか次々に声をあげる。
「お!? あれ、宇多方じゃね?」
「ほんとだ、宇多方の姉貴の方だ」
「なんで? あいつ、今日休みだろ?」
「つーか、なんで裸なんだよ?」
 なに? こいつら、タレントの美耶子ではなく、同級生として美耶子を知ってるのか?
 くいくいと袖を引かれておれは気づく。
 すぐ側に、ロングヘアの少女――西洋人形のような整った顔だちの小学生がいた。
「珠子!?」
「……(こく)」
 宇多方家の末っ子、珠子だ。美耶子とは双子だから同い年で同じクラスである。
「なんで、ここに!? 美耶子の撮影を見に来たのか?」
「……(ふるふる)」
 基本、珠子はひどく口数が少ない。
「うーん、じゃあ、なんでここにいるんだ?」
「……(これ)」
 無言で珠子は「学校からのお知らせ」のプリントを見せる。
 そこには「課外学習・フィールドアスレチック」と書かれている。あ、そうか。今日は美耶子と珠子のクラスは課外学習としてこのフィールドアスレチックに来ることになっていたのだ。美耶子は仕事を優先してそれを休むことにしたんだった。学校を休むことには反対の、長女にして宇多方家の家長である一子ちゃんも、「課外授業」を休むことに関しては目をつぶってくれたのだ。それは、「仕事」も、「学校外で学ぶ」という意味において「課外授業」と同格、という一子ちゃんの考え方によるものだ。
 その課外授業の場所がロケ地と重なるとはなんたる偶然。
「偶然じゃないけどね、うふふ。これぞどっきりよ」
 そこに桃山園がやってきて、嬉しげに言う。な、なんだと!? 
「まだわかんない? このどっきりの対象は、仕掛け人の美耶子よ。お仕事だと思ってたら、学校の同級生にすっごく恥ずかしいところを見られちゃうの。そのときの美耶子の反応を視聴者にお見せするの、いい趣向でしょ?」
 お、鬼か、てめえ。
「ふん、別にいいでしょ? あんたの出した条件ものんであげたんだし」

       つづく

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