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美耶子のお仕事 「どっきり大作戦!」(02) 

カテゴリ:うたかた 美耶子のお仕事

   ■2
 楽屋代わりのワゴンのスライドドアが開いた。
 スタッフたちの視線がそちらに集中する。準備は万端で、美耶子待ちの状態だから、それは自然な反応だ。
 だが、なかなか美耶子は出てこない。何度かスニーカーを履いた生足がステップに覗くが、勇気が出ないのか、すぐに引っ込む。
「早くしてくんないかしら、主演女優さん?」
 桃山園がメガホンを掌に当ててポンポン鳴らしながらせっつく。
 それをきっかけにようやく美耶子が姿をあらわす。
 白いローブを羽織っている。メイクさんの心づくしだろう。
 髪はツインテール。普段はセミロングの髪を自然に垂らしているが、芸能活動をしているときの美耶子のトレードマークはこのツインテールなのだ。薄くナチュラルメイクも施されている。
 それだけで、宇多方家の喧しい四女は人気子役の「宇多方美耶子」に変わる。
 表情は硬い。それはそうだろう。ローブの下には『バカには見えない服』しか身につけていないのだ。そして、この服が見える「賢人」はこの世にはいないのだから。
「あら、なにそのローブ。それじゃあ、せっかくの衣装が見えないじゃない」
 意地悪く桃山園が言う。
「ほ、本番になったら脱ぐの! それまでは、衣装は……隠すっ!」
 声をはりあげる美耶子。頬が赤く染まっている。
 実際のところ、仕事で裸になるのは初めてではない。ドラマではたいてい入浴シーンや着替えシーンがあって、スタジオでは全裸になることも珍しいことではない。そのへんの度胸はある方で、演技と割り切ってしまえばかなり大胆なこともやってのける。全裸で男性共演者と入浴するシーンを演じたこともあるほどだ。
 だが、ここは屋外である。周囲をスタッフがガードしているとはいっても、野次馬の視線もある。
「ふ、まあ、いいわ。じゃあ、はじめましょ、最初のどっきりよ!」


「どっきりそのいちぃ~! うっそー、見えないドレスを着た小学生がファッションショー!」
 桃山園がドラえもんっぽい声で声を張り上げる。
「じゃ、よろしくぅ」
 どっきりの撮影現場は公園の中央噴水付近。家族連れやカップル、近くの球場で午後行なわれる試合観戦のために訪れた人たちなどがたむろっている。
 そこに、裸の女の子がしゃなりしゃなり歩いてきたら群衆はどんな反応をするか、という趣向だ。これが大人の女性だったらただちに警察沙汰だろう。小学生の美耶子であれば子供のイタズラで済む。
 カメラマンは群衆に紛れ込み、さまざまな角度から、美耶子と、彼女を見て驚く人々の反応を捉えることになっている。カメラは荷物に仕込んだり、あるいはハンディビデオカメラで偶然撮っているように見せかける。
 美耶子はローブを着た状態で、複数のスタッフに囲まれて移動する。撮影現場で、スタッフが自然に離れていき、一人残された美耶子は無線で桃山園の指示を聞きながら演技をすることになっている。
「美耶子さん、所定位置につきましたー」
「各カメラ回しはじめましたー」
 ADたちが各所の情報をまとめて報告する。
 桃山園は機材を積みこんだ大型車に乗り込み、複数のモニターに映る美耶子を確認する。ローブ姿で公園に立ち尽くす美耶子の不安そうな表情。くひひ、と桃山園が笑う。
「美耶子、聞こえる? 聞こえたら右手をあげて」
 無線で指示を出す。
 おずおずと右手を挙げる美耶子。
「いっとくけど、そんな泣きそうな顔じゃ、視聴者には見せらんないわよ? あんたもプロなら覚悟をきめなさい。わかった?」
 叱責されて美耶子の顔が固くなる。プライドを刺激されたのだろう、パチンとじぶんで頬をはたく。
『大丈夫。いつでもいけます』
 ネックレスに仕込まれた超小型マイクが拾った声が届く。
「OK、じゃあ、スタートよ。み~やこちゃん、ファッションショーのつもりでね」
 GOを出す。
 美耶子はそれを合図に――

              つづく

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