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真由美の一日(7) 

カテゴリ:偉大なる助平

 涙のせいで行く手が見えず、だから、その男の存在に気づくのが遅れた。わかっていれば、やり過ごせたのに。もともとおおざっぱで、そんなに注意深いひとではないから。
「お、真由美ちゃんじゃないか」
 おおように声をかけてくる。いつでも楽しげな表情、態度。人生を謳歌しきっている、子供のような大人、あるいは、大人のような子供。
 色事極太。好男の父である。
「なんだ、ウチの前まで来て素通りたあ水くさいな」
 派手なアロハに短パン、浅黒い肌に金のアクセ。完全な遊び人スタイルだが、エリート商社マンで、世界各国を飛び回り、数カ国語を操るとともに、大型免許やら飛行機のライセンスやら船舶免許やら、数十もの資格・免許を持っているという、マルチな人間だ。数多くの異名を持つが、その中でも本人が一番自慢としているのが「素人女性千人斬り」という称号である。
 真由美とは、真由美がよちよち歩きの頃からのつきあいだ。
「好男は家にいんだろ? 寄ってけ、寄ってけ」
 真由美が事情を説明するいとまもなく、肩をつかんで色事家へと押し込んでいく。
 いくら真由美が柔道の達人でも、この男の強引さにはかなわない。
 色事家に、久しぶりの訪問を果たすことになってしまった。
「お、ほかにもお客さんが? 女の子か」
 玄関の靴の並びを見て、極太が驚いたように声をあげる。
「お、おじさん、声、大きい」
「なんで? あ、なるほど、好男のやつ、例のガールフレンドを連れ込んだのか」
 察しがいい。もとより頭の回転は速いのだ。
「知ってるんですか?」
「そりゃあ、息子のことだ。だいたいはわかるさ。そうか、アイツがなあ……」
 遠い目をする。この男のことだから、息子が女の子を家に連れ込んだことについて批判的であるはずがない。小学生のときにすでに複数の愛人を持っていたというような男だ。むしろ喜んでいるに違いない。
 だいたいにして、好男はなんで極太が帰ってくる時間帯に美琴を連れ込んだのか。詰めが甘すぎる。
「おじさん、仕事は?」
 ついつい小声になる真由美。
「いやーまーなんつーか、リストラ?」
「うそっ!」
「不景気だからなあ。もっとも、おれの仕事知ってるだろ? もともと仕事があるときは忙しいし、そうでもない刻はひたすら暇なんだよ」
 そういえば、何年か前に極太は商社をやめていた。仕事(と女遊び)にかまけすぎて奥さんに逃げられたのがきっかけだったようだが、今はフリーのコンサルタントのようなことをしているらしい。
「大丈夫なんですか……?」
「ああ。いざとなれば好男を働かせるから大丈夫。あいつ彼女ができて調子のってるから、半年くらいマグロ漁船に乗せてみるのもおもしろい」
「中学生の息子になにさせる気ですか……」
「あと、沙世もいるしな」
 好男の妹の沙世はまだ小学生だ。
「あいつはその気になれば俺より稼げるぞ。Tバックはかせて写真集とかDVDとかよ」
「冗談でもそんなこと言わないでください」
 この時節柄、恐ろしすぎる。たしかに沙世なら売れそうだけれども。
「あたりまえだ。かわいい沙世の裸をロリコンのクズどものズリネタにさせてたまるかよ。あれはおれだけのズリネタだ」
「つかっとるんかい!」
 思わず真由美は突っ込んだ。
「……その突っ込み、さすがだな」
 嬉しげに唇をゆがめる極太。そんな表情は好男にそっくりで、ついドキリとしてしまう。
「お?」
 極太が耳に手をあてた。
「ほら、真由美ちゃん、そろそろ始まったようだぜ」
「な、なにがですか」
「わかってるくせに……好男の部屋から、かわいい声が聞こえてきたじゃないか」
 ――まさか。
 ――せめて、お父さんが帰ってきていることくらい、気づけばいいのに。
「さ、真由美ちゃん、行こうぜ」
 極太が立ち上がる。
「ど、どこへ?」
「決まってるだろ、好男たちを覗きに行くんだよ」
 極太は悪戯小僧の表情で言った。

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