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真由美の一日(3) 

カテゴリ:偉大なる助平

昼休み

「な、大河原、いいだろ?」
「佐々木先輩、約束が違いますよ」
 昼休み、校舎裏に呼び出された真由美は、目の前の佐々木に非難の視線を向ける。
 佐々木は柔道部の前部長だ。三年生なので部活は引退している。
「あのことは、朝練で返すことになってるんですから――」
「わかってるけど、朝練なんてもう行けねえよ。今月、おれ本命受けるし。毎日勉強漬けなんだぜ」
 佐々木はすでに推薦入試に一校落ちていた。推薦にもかかわらず、面接で大失敗したのだという。
 それからは必死で受験勉強にいそしんでいるということだったのだが――
 少し見ないだけでずいぶんとやつれてしまっていた。
「やらせろよ、大河原」
 手を伸ばしてくる。
 真由美は体をかわす。佐々木も黒帯だが、完全になまっている。勢いあまってたたらを踏み、振り返って
真由美をにらむ。
「――バラすぞ、みんなに」
 低くくぐもった声だ。目つきも尋常ではない。
「先輩こそ、受験に問題出るんじゃないですか? 後輩脅してエッチしてたとかわかったら」
 佐々木の表情がくしゃっとつぶれる。
「大河原のこと、忘れられないんだよっ! おまえの身体のことばかり考えて、勉強が手につかないんだ!」
「そんなこと言われても――」
 真由美は困惑する。
「あのときっ、おまえが、おれたちを誘惑しなけりゃっ!」
 佐々木が人差し指をつけつける。
「おれは平凡な人間だ。どうせこのまま高校や大学に行って就職するとしても、たいした人間にはなれないし普通の女としかつきあえない。庶民ってやつだ。アイドルとか女子アナとかモデルとか、ああいう特別な女は金持ちとかプロ野球選手とか、そういうのとくっつくんだ」
 でもな、と佐々木は続ける。
「大河原、おまえみたいな可愛い女とヤレたんだ。童貞だったおれが、天才柔道少女、オリンピックに出るかもしれねえ有名人とヤったんだ。おまえを何回もイカせてやった。中にも出しまくりだ。はは、すげー、おれ。おれ、すげー!」
 けたたましく嗤う佐々木。その姿は奇怪であると同時に痛ましくもあるように真由美には思えた。
 自信を失っているのだ。佐々木は。初めての受験に失敗して、自らに絶望している。そこから抜け出るためにあがいているのだ。真由美を抱くことによって自信を取り戻せると思っている。というか、それ以外すがれるものがないのだろう。
 ――あたしはこの人を軽蔑することはできない。
 真由美は思った。自分のなかにどんなに汚いものがとどろっているか、ここ数ヶ月で思い知った。好男と美琴のことで、どれだけ卑劣に振る舞ったか。
「……一回だけですよ」
 ため息とともに、真由美は言った。
「大河原!?」
「昼休み、時間短いから……それと制服を汚さないでくださいね」

  つづく

この記事へのコメント

Re: 真由美の一日(3)

地震大丈夫だったでしょうか…?

Re: Re: 真由美の一日(3)

こちらは大丈夫です。
被災地はたいへんだと思いますが……
なにもできなくて申し訳ないです。

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